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業界の一部では死んだことになってるそうですが


by Count_Basie_Band
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続・世界で一番美しい国

同じく『格差社会 何が問題なのか』(橘木俊詔著、岩波新書)からです。
「橘木俊詔」という経済学者は1943年生まれで、経済企画庁、日銀、経済産業省などで研究職に就いたことはありますが「経済財政諮問会議」のような政策決定に発言する機関には加わったことがなく、現在は京都大学大学院経済学研究科教授で、2005年度の日本経済学会会長でした。
日本語の文章は私から見れば問題ありですが、小泉竹中路線には真っ向から対立する経済財政運営論を分かりやすく説くことのできるエコノミストです。

本書の骨子を私なりにまとめれば、

竹中は「日本は高負担高福祉の国である」という誤った認識をワイドショーレベルの国民や、利権に有り付けるポストと次の選挙しか頭にない国会議員たちに植え付け、その誤った認識に基づいた政策を実施してきた。

ということです。ただ本の中では具体的な立証が方々に散らばっており、この骨子がよく見えません。

「高負担」とは「大きな政府」という意味になります。ところが先進国の租税負担率を見ると、スウェーデンが49.3%、フランスとイギリスが約38%、アメリカが23.8%なのに対し、日本は21.5%で先進国中最低です。つまり日本の政府は先進国の中で最も小さいのです。個人所得税に至っては他の先進諸国の半分です。

「高福祉」とは国民所得に占める社会保障給付費の割合が高いことを意味します。1993年にこの割合はスウェーデンが53.4%、フランスが37.2%、ドイツが33.3%、その下にイギリス、アメリカが来て日本は15.2%と、ここでも先進国中最低です。ただし、1998年には、日本は20.4%となり、アメリカの18.4%を抜いて最下位を脱しました。これは高齢化の結果です。先進国の中では「低福祉国」であることに変わりはありません。

「教育への公的支出」も最低です。

他にも様々な日本社会の異常性が指摘されています。
対策もいろいろ書かれていますが、いわゆる「正規労働者と非正規労働者の格差問題」については「同一労働同一賃金」の徹底が提案されています。ご存じの方はご存じでしょうが、銀行のカウンターに並んでいる女性行員には正行員と派遣会社からの女性が混じっています、やってる作業はまったく同じなのに正行員の賃金は派遣の人の約2倍です。さらに正行員は2年で異動し、キャリアを上げていきますが派遣行員は何年もそのままです。だから派遣行員のネコババが時々ニュースになるのです。

福祉その他の財源としては所得税と消費税の累進性強化が提案されています。
日本の所得税の最高税率は、かつては70%だったのが今は37%です。「累進性が強すぎると高額所得者が勤労意欲をなくす」という理由で下げられました。それはウソだ、と本書は断じ、せめて50%まで引き上げるべし、と主張しています。
消費税の「累進性」とは拙ブログの10月8日付け「オカミ」で書いたことです。河野太郎が噛み付いた商品別の税率です。「オカミ」に対しては在カナダで「Kuri's Mom」(http://tmmari.exblog.jp/)を管理していらっしゃるTsukamotomaru様からカナダの現状についてのコメントを頂いています。

カナダもけっこう細かく決められていますが、食品以外のもので税が免除されているもの(学用品、医療品・・・)は、誰でもが納得いくものに限られていますので問題になることはないと思います。

カナダは欧州型の付加価値税ですが、支払う消費者から見れば付加価値税も、アメリカの売上税も、日本の消費税も同じであり、免税される物品サービスもヨーロッパ諸国は大体同じです。本書は免税対象以外は15%にすべしと主張しています。
間接税の良さは、税を払いたくなければ商品サービスを買わなければいい、という点に尽きます。

私なんざ、衣類、履物、ゴルフ用品、オーディオ・ビジュアル設備その他の家電製品は一生分持っていますから、食品と医療以外にはカネを使いませんよ。
by Count_Basie_Band | 2006-10-16 17:03